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そんなロビンを尻目にキルハはその場を離れ、子供たち全員を見渡せる場所まで来ると、威厳のある声で言った。
「魂が生まれる場所、帰る場所、それは【魂の門】。わかったかな?」
「はい!」
子供たちが一斉に返事をする。
しかし、ロビンだけは誰にも聞こえないようにこう呟いた。
「じいちゃんのバーカ。」
そんなロビンの声がキルハの耳に届いたのだろうか。
気だるそうに机の上に体をうつ伏せたロビンに、キルハが鋭い視線を送った。
視線に気づいたロビンが慌てて姿勢を正す。
そんなロビンの様子を、表情一つ変えずに見つめていたキルハであったが、おもむろに黒板の前に移動すると、そのまま講義の続けた。
「魂は『門』を通ってこの世に現れる。そして、生物、あるいは物質に宿る。魂とは生物だけに宿るものではない。草や木はもちろん、水や石にも、人が作り出した道具にも宿る。魂が宿って初めて、すべてのものは、この世に存在できるのだ。」
キルハの話に子供たちは黙って耳をかたむけた。
「魂が離れた時、すべてのものは終わりを迎える。生き物なら死を迎え、物質は消滅し、道具なら壊れる。魂とは『存在』を『存在』たらしめる重要な・・・」
ちょうどその時、大講堂上の鐘楼の鐘が、深く澄んだ音を響かせた。
正午を知らせる合図だ。
「よし、今日の講義はこれまで。続きはまた今度にしよう。みな、気をつけて帰りなさい。」
子供たちが一斉に立ち上がり、キルハにお辞儀をした。
そして、ガヤガヤと出口に向かう。
そんな中、ロビンのもとに同年代の少年が数人集まってきた。
「今日の話は特に難しかったな。」
「うん。言ってることが全然わかんなかった。」
「しかし、ロビンはすげーよな。キルハ様相手に、よくあんな態度をとれるな。」
「オレ、ある意味、尊敬しちゃう。」
「尊敬しちゃう」の言葉をロビンが鼻で笑う。
「へっ、あれぐらい余裕だって。あのじいさんは頭が固いだけの、ただの頑固ジジイさ。」
「そんなこと言えるのは、おまえだけだって・・」
「あのジジイにはきっと『石の魂』が宿ってるんだぜ。だから頭が固いし、げんこつも固いんだ!」
ロビンの言葉に仲間たちは一斉に大笑いした。
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