陽だまりの君と戸惑いの従士

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日が昇るよりも早く、守屋優は起床する。 窓を開け、ひんやりとした空気を肌に感じ、背筋をピンと伸ばし、よし、と小さく呟いて着替える。 今日は日曜日。学校の課題は既に終わらせてある。キッチンへ移動しながら今日の予定を考える。と考えながらも予定はほとんど決まっていた。 朝食を作り、後片付けをし、屋敷の清掃をする。そして一息ついた後、午後からは自己研鑽のため、剣を振る。 もはやこの一連の流れは昔からの日課になっていたのだ。屋敷の掃除だって、決してしなければならないほど汚れているわけではない。優にとっては大きな屋敷の掃除すら、自己研鑽の一部になっているのだ。屋敷を掃除することで、心の掃除もしているような感覚を覚える。 優はとことん自分に厳しかった。自分は咲の幸せを守るためにいるのであり、自分が楽しむ必要は無い。そう考える優は、一般の他の学生が楽しむようなことには全く興味を示さない。そのような娯楽には興味がなく、むしろそんなことに時間を使うのなら、鍛錬をしているほうが自分には数倍有意義だと考えている。 もしくは、従士という立場が、彼をそんな普通の楽しみから遠ざけているのかもしれない。しかし、それは優自身が自分で選んだ道であり、後悔など全くしていない。 それに、面白そうなことや、学校で話題になっていることは、いつも咲が熱心にすすめてくるので、特段話題についていけなくなることもない。 エプロンと三角巾をつけ、料理をする準備を整え台所に立ったとき 「おはよぅ、優くん」 「おはようございます、お嬢様。今朝はお早いですね」 まだ目覚めきっていない咲に微笑みながら優は挨拶をする。 「ごはん作ってんのー?」 眠たい目をこすりながら咲が尋ねる。 「いえ、これからです。なにか食べたいものはありますか?」 「うーん、ご飯とわかめのお味噌汁、たくあんと焼き鮭がえぇー」 「了解です。ではお顔を洗って着替えていらしてください。」 「ふわぁ~い」 ヨタヨタと咲は一旦自室へと戻っていった。 「ふふ」 優はかすかに笑いながら、冷蔵庫から鮭を取り出し、焼き始めた。 「今日も清々しい一日になりそうだな」 優は機嫌良く料理を続けた。
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