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「では、行って参ります」
「いってきまーす」
優は正博に深々と頭を下げ、咲はニッコリと笑いながら言った
「あぁ、気をつけて行っておいで」
正博も笑顔で見送った
「さ、優くん。行くえー」
外は天気も良く、風も心地よかった。
「んー、気持ちええなぁ」
「そうですね」
「そういえば、今日はどちらに行かれるのですか?」
「うーん、とりあえず大通りまで行こかー」
「お嬢様、ひょっとして無計画なんですか・・・?」
優は困った顔で咲に尋ねる
「ん?なんか問題でもー?大通りに行けば大体のもんは揃っとるよ?」
咲は屈託のない笑顔を優に向けながら笑って言った
「いえ・・・問題ありません」
咲につられて、優も引きつったぎこちない笑顔を浮かべた
「せっかく天気も気持ちええから、歩いて行こか」
咲が子どものように手をぶらぶら振りながら言った
「えぇ、そうですね」
そうしてあること数十分、二人は大通りまでたどり着いた
「お嬢様、疲れてはいませんか?どこかでお茶でもしましょうか?」
「うん、そうやね。なんや思ってたよりちょーっとだけ、疲れたかも」
咲は困ったように笑いながら答えた。優のすぐ自分のことを気にかけてくれるところ。咲はそれが嬉しくもあり、気恥ずかしくもあり、気が引けていてもあった。
優はいつでも自分に気を回してくれている。しかし、それは同時に常に優を心配させていることではないのか?と思ってしまうことがたまにある。
そのためにもっとしっかりしようと思うものの、実際にはあまりうまくいかない。そこにもどかしさを感じる咲だった
「いやぁ、思ってるより体力ないねんなぁウチ。優くんみたいにトレーニングでもしよーかなー」
カフェラテを飲みながら咲は言った
「そうですね。早起きして、散歩がてらにウォーキング。これでも運動にはなりますね」
「ほー、それはええかもなぁ・・・よし、明日からやってみよか。優くん、明日起こしてやー」
「キリっとした顔で起こしてと言うんですね。朝が苦手なのでしたら無理にやらなくても・・・」
優がやんわり言うと、咲はむきになって言った
「むー、やるねん!もうコレは決定事項やで!」
「わっ、わかりました。起こします、起こしますから落ち着いてください」
咲の勢いに押されて、優は承諾した。こうしてむきになりやすいところは、咲の子どもっぽいところだといえる
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