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「行ってきまーす!」
パリパリの制服にまだ新しいローファー。髪を真っすぐに整えて私は家のドアを開けた。
「ちょ……姉ちゃん忘れ物っ!」
バタバタと慌ただしい足音が聞こえたと思ったら、弟がピンク色のお弁当袋を持ってきてくれた。
「そうだった、ありがとう暁。」
「ったく…相変わらずヌケてるよな。俺の弁当忘れたら今日一日損するぜ?」
偉そうなことを言えるようになったなあ……
弟の言ったことに軽く笑みをこぼして、私は家を出ていった。
篠宮香奈 16歳、高校一年。
入学してからまだほんの二ヶ月ほど。
普通に友達もいて、仲の良い弟との暮らし。
この生活は好きだ。
変に他のことを考える必要もなく、ただ過ごすだけ。
これほど楽なものはない。
「香ー奈!何、深刻な顔してんのよ朝から。怖ーい顔してちゃ、彼氏なんてできないわよ!」
「いひゃい…いひゃいよ鞠亜」
むにっと私の頬を鞠亜という高校初の友達につままれた。
一言でいうとギャル系。
完璧に濃い化粧をしておだんごにした髪型が印象的。
何故この子と仲良くなることができたのか、今でも不思議でしょうがない。
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