第1話~荒瀬乱丸~

3/4
前へ
/4ページ
次へ
オレと剛は家の一角である道場に入った。道場はだいたいテニスコート一面分の広さだ。オレはその中心に座り座禅を組み目を閉じた。なんとなく感覚で剛が道場から出て行ったのがわかる。意識の根を道場全体に張り巡らせるイメージで意識を集中させる。 しばらくしてから、オレは霊力(異能者の持つ気配)を感じた。そしてその霊力の主の名前を呼ぶ。 「ホタルか…?」 「…お疲れ様です、若」 オレは目を開けた。道場の戸の近くにオレの通う高校の制服をきた女の子、中村ホタルがいた。この子も荒瀬組組員で異能者。 「朝ご飯の準備ができましたよ」 ホタルがいつものように優しく微笑む。 「わかった。風呂入ってからいくから」 オレは立ち上がるとホタルと並んで道場を出た。この家は和風の建物で廊下は外にせり出しているため今日みたいに暖かくて、さらにそよ風の吹く日はとても気持ちいい。 「おはようございます、若!」 「おはよーございますー」 「若、おはようございます!」 この家はとても広く組員が沢山いるので(ま、だから「本家」って呼ばれてるんだけどな)どっかこっかで誰しらに会う。みんなオレを見ると必ず一礼しつつ挨拶をしてくる。一応現総大将の孫で荒瀬組の若頭だからだ。オレはこの家を継ぐ気はさらさらないのにな…。さらにうちの組には小さな子供も沢山いる。みんな異能者だとわかり親にすてられ総大将、じいちゃんに拾われてここにきた。そういう子を育てるのも荒瀬組の仕事の一つらしい。 そうこうしているうちに風呂場の前までつくとホタルが言った。 「若、背中ながしましょうか?」 言い忘れたけど、ホタルは天然だ。 「だ、大丈夫!それぐらい大丈夫だから!」 オレは逃げるように脱衣場にかけこんだ。いくらなんでも同い年の女の子と一緒に風呂入れるかぁ!
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加