誕生

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ある種の同じ着眼点を持っている人間がぼくのことなんて語らなくていいんだけど、その人が自分自身にとっての次の自分を見つけて、その過程を歌にしてくれて、次の世代に、次のミュージック・シーンに伝えていってくれるものだったらよかった。そうはならなかったなとぼくはずっと感じてきて、はがゆい思いだった。なんとかしたい、なんとかして自分自身を浄化させるためにも、やっぱり自分で作らなければだめなんだと思った。 音楽はとても好きだし、だけど大変だし、やらなければならないし。ある作品を作り終えて、この作品で満足してしまったらもうそれ以上作らなくてもいいと思えるような作品を作りたい。でもその根底にあるのは何かというと、今まで自分がやってきたこともすべて含めて心が浄化させるようなものを自分が作っていくことですね。「誕生」にしても、やっぱり歪曲されて聴かれる部分が無きにしもあらずだと思うし、だからもっと次に自分がやらなければならないという使命感とか責任感は確かにあるんですよ。よく、一度スポットライトを浴びるともう二度とステージから下りられないといいますよね。あれって深く追求していくと、やっぱり責任感とかそういったものだと思う。自分の美的感覚が受け入れられてしまったら、もっといいものを作ってみせてあげようというような優しさとか抱擁する気持ちとか人間愛に近いものです。結婚したことも、それから子供が生まれたことも、自分が仕事をしていく上で覚えた人間関係を含めて、大切なものとか醜いこととかを自分の中で消化して歌にしていきたいという気持です。たとえばひとつひとつの迷いに対して、きちんと答えを出したものを歌っていけたらいい。それはそんなに明確な答えでもないし、もしそれが人生のことを語り尽くしてしまうようなものになれば、もちろん最高だし。そこまで神がかったものになればそれは幸いだけれど、まさしく人間の限界や能力の限界みたいなもの、そのあたりがひとつの課題になっていますよね。
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