今回のアルバムはぼくの一介の優しさになりえていればいいと思う

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自分を磨いていくことでまわりを触発したり触発されたりできるようになっていくべきなんだろうし、そうならなくてはいい作品は絶対生まれないと思った。レコーディングの作業のなかで、それから自分が生活していくなかで、常に聞く耳を持ち正確な判断をし、できればそれを善意で返してあげたいし、また善意で返してもらえるような状況というのが本当にいいなと思い始めている。ぼくより人生経験のある人の意見を聞き、ぼくとはまた違う価値観の同世代の人の意見を聞き、いろんなことを聞いていくなかで生きていかなくちゃいけない、仕事をしていかなくちゃいけないという気持ちになった。 そうして、自分が残してきた軌跡を振り返ってみると、今のバンド・ブームとかそういったもの推し量っていくと、ぼくが残してきたのは狂気に至るセンシティブな部分だけのような気がした。自分と同じようなテンションを感じる人が何人かいる。でも、それはもう音楽じゃなかったりする。もちろん彼らはすごく純粋だからこそそうするんだろうけれど、どうしたらいいのかわからなかったりしてる。ぼくもそうだったから、きっとぼくはいまだにそうだろうけれども、まずは自分の信じるものの模倣から始まるでしょう。その模倣がひとつの流行だったり、そね部分だけで商売している人もたくさんいるし、そうすると悪循環になっていくがした。けれどそれを音楽という形態にできたときに、初めて人との接点が生まれてわかりあえる状況なるだろうと思う。そしてそのときに昇華される何かが感じられる。大切なのはそのことで、ビジネス化することじゃない。ビジネス化すると、もう反体制的なことだけを歌い続けなきゃならなくなったり、宿命がそこで決まってしまう。ぼくが十代の代弁者と言われてきたつらさや背負ってきたものを、彼らも繰り返してしまうんじゃないかという危惧を感じた。だから何かのきっかけで、彼らが音楽的に目覚めてくれるのを見守っていた部分もあったんだけど。そんなおこがましいことを言えるような人間でもないかもしれないけど、でも、音楽を好きな者同士としてね、音楽を好きになってくれてありがとうという意味も含めて、そんな気持ちだった。
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