11月26日(金)

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あれから5日‥ 俺は生きた心地のしない日々を送ってきた。 授業中も休み時間も普段なら、聖を見つめたり、声を掛けたりするのだが、どこで誰が見てるかわからない。そのため、極力、聖とは距離を置くようにした。二人っきりの昼休みも、忙しいからと最近は独りで過ごしている。いつ、どこで見られているかわからないから、油断はできない。 もちろん一日中気を張っていると、疲れは一気にやってくるので、金曜日の今日には、体力も残りわずかとなっていた。 結局、送り主もわからないし、あれ以来新たなメールも届いていないしな‥ 諦めたのか、動きを伺っているのか、それすらわからない。 悶々とそんなことばかり考えていると、いつの間にか放課後がきていた。 誰もいない教室で、プリントの採点をする。 外では、運動部の声が響いている。日が落ちるのが早くなったこの時期、運動場でのクラブ活動は電灯に照らされ行われる。 採点も一段落ついた頃、教室の扉が開いた。 「先生‥今日はこんなところにいたんですか。」 「神崎か‥」 聖(忘れてるかも知んないけど、こいつの名字が“神崎”ね)は、少し不満げな顔をしたかと思うと、スタスタと自分の席へ向かう。 聖が、名字で呼ばれるのが何となく好きではないのはわかっていた。でも、ここは学校。やはり気を緩めることはできない。
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