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風呂である。
とにかく汚かった私は、こんな汚れた身体が嫌で、早速風呂に入りたいと訴えた。
シャワーで流し、タオルなんかは無いから仕方なく洗剤を付けて手で念入りに身体を擦る。
ふと、左の太腿の焼け跡が、目に入った。
奴隷の烙印。
消えない。
消すには、どうしようか?
……そうだ、下地ごとえぐってしまおう。
何か無いかな……?
きょろきょろと周りを見渡してみるが、バスルームだ、そんな危ないものがあるわけない。
さて、どうしたものか。
精霊でも呼んでみる?
否、でも……。
あぁ、剃刀が向こうに、カーテンの向こう側にあった気がする。
それでやろう。
そうときまれば行動は早い。
シャワーなんて放置で、カーテンを開けて、剃刀を探す。
「……あった」
やっと見つけたそれは、ここからでは少し遠い。
さっさと出て、手にとる。
錆は、無い。
よく切れそうだ。
確認して、腿の烙印の上部の肌に添える。
少し刃を自分の方に斜めにして。
刃が肌に滑り込むように。
そして--
ぶつ、という、肉を裂く感覚とともに、刃が肌に飲み込まれていく。
そのまま下へ滑らせれば、肉がだらりとだらし無く垂れ下がった。
カパリと、蓋が、開いた。
けれど、めくれたのはここから見て烙印の右端部分だけ。
未だ何回かやる必要がある。
もう一度、今度は刃を添える位置を未だ痕のある部分へ移動し、滑らせる。
もう一度。
もう一度。
「……ふぅ……はぁ」
痛みは感じていないのに、気付けば何故か脂汗が額に浮かんでいた。
私はそれを造作もなく拭うと、また刃を斜めにして添える。
これで、ラスト。
刃を、滑らせる--
「おい!? なにしてる!」
切り離し終えたところで、彼の声が聞こえた。
驚いて顔を上げると、扉に血が飛んでいる。
きっと肉が落下したときに跳ねたんだ。
このせいでばれたんだろう。
厄介なことになったものだ。
「おい! 聞こえてるのか? 開けるぞ!?」
彼は器用なことに錠前破りもできるようだ。
がちゃがちゃと鍵を弄る音がする。
開けようとしているのか。
きっと開いてしまうんだろうな。
あぁ、入ってくるんだなーと、ぼんやりと思っていた。
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