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瞳を開けると、そこは黒。
闇。
数回瞬きをすると、夜の匂いを感じた。
軽く頭を振って意識を覚醒させると、柔らかい物に包まれているのに気付く。
布団だ。
どうやら彼は、私をベッドまで運んでくれたらしい。
私がゆっくりと起き上がると、彼が入ってきてた。
「起きたな」
電気が付く。
私は眩しさに思わず瞳を閉じる。
「あ、悪ぃ。眩しかったよな。電気、消すか?」
「構わない」
どうせすぐ馴れるし。
姿は見えないが、足音で彼が近づいて来るのがわかる。
もっともその足音も、私に分からせるためにわざと立てているのだろうけれど。
「腹減ったろ? 部屋に用意してあるから、俺が運ぶけど良いか」
私は小さく頷く。
空腹を感じていたのは事実だし、彼の口調が許可を求めるものではなかったから。
布団が身体の上から退けられるのを感じた。
彼の手が、傷に障らない様に私の膝裏と背中を触る。
「よ、っと……」
彼が私を持ち上げると同時に、私は瞳を開いた。
「ぉわっ!? あー……驚吃するから、こう、カッと瞳を見開くのは止めてくれ」
……そんなつもり無かったのだけれど。
取り敢えず軽く首を傾げておいた。
彼は開いたままだったドアを私をぶつけない様慎重に通り、部屋の椅子に座らせた。
テーブルの上を見ると、私の分と彼の分があった。
もうすっかり冷たくなっている。
「これ、私を待ってたの?」
「ん? あぁ、そう。一人で飯なんて寂しいだろ?」
……一人で食べるものでは無いの?
「知らない。誰かと食べたことなんて無いもの」
「そ、か……」
彼は変な顔をしたが、質問して来ることはなかった。
「お? てことはもしかして、俺が一緒に食べる一号?」
「そうね」
「おっしゃ! やりぃ!」
楽しそうにガッツポーズをする彼。
……やっぱり理解できそうに無い。
「んじゃ、とにかく早く食おうぜ」
「ん。いただきます」
「いっただっきまーす」
私がゆっくり手を伸ばすのと同時に、彼は勢い良く手を伸ばし掻き込みはじめた。
こんな食べ方初めて見る。
相当空腹だったのか、それともこういう人なのか。
ま、そのうちわかるでしょう。
一緒に旅をするみたいだし。
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