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第一ベッドは二つあるのだから、別々の部屋で寝る方がおかしいのではないのか。
私には彼の思考は一生理解できないのではなかろうかというほど不可解だった。
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嫌な気配に目を開くと、辺りは既に明るい中、私一人が寝ていた。
彼はどこへ行ったのだろうか。
隣の部屋にある気配は、彼のものではない。
下賎で、卑しい。
そんな気配だ。
脚の動きを確認する。
昨日よりはマシだ。
が、まだまともに動けるものではない。
これでは逃げることすらままならないだろう。
ギイと、扉の開く音がする。
私は目を閉じる。
まともに抵抗することが出来ない以上、意識が無い振りをして大人しくしている方が得策だろう。
だがしかし、何故そいつらがここにいるのか。
彼が出て行ったなら、彼は分別のある人間、鍵を掛けて行ったはずだ。
開けることは不可能では無いだろうが……中々に頑丈であったはず。
それを開けられるものが、こんな下賎な雰囲気を醸し出すものか。
「なんだ、おい、寝てるぜ」
囁き声が聞こえてきた。
「本当か? ……一応嗅がせておこうぜ。急に起きて暴れられちゃあ堪ったもんじゃねえし。ま、脚の怪我のせいで暴れることも出来ねえと思うがな!」
っ!?
何故、知っている?
ここの関係者ということか?
「でもこいつ奴隷上がりなんだろう? 確かに綺麗だが……価値があるのかねえ」
こいつら、私が狙いか。
何故?
私が奴隷だったなんて、何故知っている?
まさかあの男?
教えたのか?
そのために最初から?
だとしたら……赦せない。
赦さない!
「ま、親方が御望みなんだ、連れてこうぜ」
「だな。んじゃ、ふかぁい眠りへどーぞ、っと」
何かが口元に宛てがわれる。
恐らく、何らかの薬湯を染み込ませた布だろう。
私は耐性があるはずだが……駄目、だ。
強すぎ、る。
意識……が……飛んで、しま、う……。
まだ、まだ……なのに……大事な話を、きかな、きゃ……。
ふくしゅう、を…………。
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