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目を覚ますと、私は両腕を鎖に繋がれ地面に転がされていた。
全身を少し揺すってみるが、感覚があまり無い。
麻痺しているのだろうか。
音で、両足も鎖に繋がれているのがわかった。
「目を覚ましたかい、別嬪さんよぉ」
部屋に来た奴らとは違う声がした。
「美人が鎖に繋がれてる姿ってのも、中々そそるな」
卑らしい笑いとともにそう言う女を黙って見上げる。
そのまま辺りをさりげなく観察する。
薄暗い。
私のいるところが窓の下なだけで、この奥はここから視認することは難しい。
自分のいる場所のほうが明るいので、暗いところの識別が付けにくい。
これは、狙ってあるのだろうか。
女の顔に視線を戻しそのまま黙っていると、顔を蹴られた。
「何だってんだよ! 何とか言ったらどうなんだ!」
それでも私は答えない。
そんな私に嫌気がさしたのだろうか。
ハッと言い顔を背け、気持ち悪ぃ奴だな、と吐き捨てた。
そこから暫く無言が続く。
こいつがここの頭なのだろうか。
もう少し情報が欲しい。
そう思っていると、何処からか唐突に猛獣の鳴き声がした。
思わずそれに身を震わせると、女は面白そうに笑った。
「はっ、流石の気丈なお嬢さんでも、猛獣は恐いってか? 笑わせてくれるなぁ。そうそう、抵抗すんなよ? 場合によっちゃぁお前、あいつの餌だからな」
私の身震いは喜びによるもの。
こいつの考えは全くの勘違いだ。
が、好都合。
何とかして、その猛獣とやらをここまで連れて来させられないだろうか。
「なんにも喋らねぇな。お前のお守りにも飽きてきたぜ。そーだ! お前のお守り、あとはあの鳴いてる奴に任せてやろうか」
女は、わざとらしく芝居がかった口調で言った。
何て愚かな。
私はピクリと体を跳ねさせる。
それを見て取り、女は上機嫌になる。
「よし、連れて来てやるよ。待ってな」
女は、暗がりに向かって何やら指示を出す。
金属のこすれる音がした。
そして、爪が地面に当たる音がこちらに近づいて来る。
……ハルベルト、だ。
「餌付けをしてたら懐いてな。お前を襲わないようには言い付けておくから、まあせいぜい仲良くしてやってくれや」
薄ら笑いを浮かべそう言うと、ハルベルトを連れて来た男と共に奥へ下がって行った。
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