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「私はあなたが私を売ったのだと思ってた」
直接的に質問することはせず、意志を匂わせる。
「それは違う!俺がライナを売るわけ無いだろ?売ったのは……あのホテルの従業員だった」
あのホテルの?
粗末な所には見えなかったのに。
「元からあいつらと手を組んでたらしい。前にもこんな事があったらしくてな」
そうか。
なら私の居場所も、状況も、タクトが出ていったことを知っているのも頷ける。
「私が奴隷だとは?」
「え、誰にも言ってねぇぞ?」
おかしい。
ならば何故知られていたのか。
だが、彼に嘘をついている様子はない。
「わりぃ。俺がもうちょいしっかりしてれば、こんな事にはならなかったんだがな……」
「気にしないで。あなたのせいではないわ」
本心だった。
フォローなんてするつもりではなかったのだけど、あまりに沈んだ顔をしているものだから思わず出た言葉。
「ありがとな。でもやっぱ俺は、後悔してる」
「……どうやって私を?」
見つけたのか。
それを問う。
これ以上暗い顔をしてほしくなかったから。
「…………脅した」
ぼそりと一言呟かれた。
「そこは詳しく聞かないでくれ!」
「……わかった」
まあ、色々あったのだろう、ということにした。
そう、疑っていたとはいえ、今回は助けられたのだ。
そうそう文句を言うものではない。
「……私、この子と話がしたいの」
ハルベルトに手を伸ばしながら口を開いた。
「あ、ああ。わかった。隣に座っていいか?」
「邪魔をしなければ」
彼は、ありがとう、といいながら隣に座った。
私はハルベルトを撫でる。
「ねぇ、何故私を噛まないの? 何故命令して無いのにあの女を殺したの? 何故ここまで、ついて来たの?」
そっと問いを並べるけれど、この子達は喋られない。
つまり、答えも返って来ないのだ。
「……なあ……もしかしてそいつ、ライナを守りたかったんじゃないのか?」
「いいえ、それはおかしいわ。元来、人と獣は相容れない存在であるはずなんだもの」
「でもそうだった。違うか?」
確かに、と一瞬は思ってしまった。
けれど、これは私の一方的な支配なのだ。
そんなことは、あるわけがない。
「ライナはさ、何とかして獣達の心を読むとかはできないのか?」
できないことも無い。
……やる意味がないと思うのだが。
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