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だが、速くて何が何だか分からない。
あぁ、この子の目を通せば良いんだ。
こんなことも簡単に浮かばないなんて。
やっぱり私は疲れている。
私は、触れている生物なら、それの感覚を共有することが出来る。
つまり、二色の世界なんかも見たことがあると言うこと。
さて、今下は……。
目を閉じて集中する。
「……海?」
向こうに、海が見える。
とは言っても、知識や感覚で知っているだけだから、確信はないが。
急いでその場で止める。
これ以上行ったらまずいはず。
海は果てしないと聞くから。
ふと、右下の街道のようなものの先に港街らしき物が見えた。
あそこに行こう。
この辺りの森の中に下りれば、すぐに街道に出れる。
あの街にもすぐに付けるはずだ。
「さあ、降りて」
鳥獣は私に従い、ゆっくりと下降していく。
円を描きながら。
そして、木を薙ぎ倒して、着地。
その間私は、背で丸くなって衝撃に耐えていた。
「着いた……」
私が降りると、あの子は飛び去って行った。
それを暫く眺めた後、歩を進める。
街道にでなければ。
早く、港町へ。
早く、早く!
半ば小走りで移動する。
森なら勘で出られる。
力のお陰で。
さあ、森の終わりが見えた。
日の下に、出た……!
眩しい。
目をすがめ、更に先へと進む。
「お嬢さん、一人旅?」
一心不乱に歩いていたら、背後から声を掛けられた。
放って置いて!
でも、それを押し殺し振り向く。
若い、私と同じ位の男だ。
「ね、一人旅なの?」
「……あなたこそ」
質問には答えず、質問で返す。
「あー、俺はねぇ……連れは全員、獣に食われちった」
彼は、苦笑と共に言った。
そんなことを言って、どうして欲しいのだろう。
同情でも欲しいのだろうか。
私には何の感慨も湧かない。
私の方が、もっと酷い目にあってきた。
「そう。あなただけ助かったの。運が良かったわね」
そういうと、彼は目を見開いた。
「おぉ~!そう言ってくれたのはあんたが初めてだよ!なあ、名前は?」
「はぁ?」
思い切り顔をしかめて返すと、彼は困ったように頬を掻いた。
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