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「いやぁ、俺も実際そう思うんだよ。皆同情して来て、物くれる奴がいたから続けてたんだけどさ」
「へぇー、それじゃ」
私は、さっと踵を返し、再び歩を進める。
こんな下らない奴、相手してる暇なんてない。
急ごう。
今ので時間を食ってしまった。
後ろから何やら声が聞こえているが、あんな奴、無視だ、無視。
さっきよりも歩調は強い。
追いつかれないように。
途中で狼をけしかけてきた。
あれであいつは死ぬか、何とかしさばいたにしても私には追いつけないだろう。
向かわせた狼は5匹。
種は、ハルベルト。
さっき見かけたのだが、明らかにあの森で最も強い種だった。
あれで生きてたら、あいつは相当強いことになる。
少なくとも、一人で生き延びたのが、運が良かっただけでは無いと言うこと。
例えそうだとしても、一緒に行く気なんてないけれど。
さて、港町までは、後どれくらいなのだろう。
もうすぐ見えても良いはずなのだが。
……見えた!
上から見た時も思ったが、中々に大きい町だ。
何か重要な港なのだろうか。
……検問?
町の入口付近で、何やらごちゃごちゃとやっている。
どうやら、本当に重要な場所らしい。
もしくは、指名手配でもあるのか。
そうでもなければ、検問なんてしないだろう。
「そこの子! ちょっと来て!」
声を掛けられた。
……仕方ない。
逃げて怪しまれる位なら、最初から行った方が良いだろう。
無言で寄って行く。
「ごめんねー。持ち物見せてねー」
持ち物……。
顔でないのなら、普通の検問なのだろう。
では、重要な街だと言うこと。
ということは、ここは、世界中に繋がっている……。
「……ありません」
検問の人に答える。
身一つで飛び出して来たのだ、荷物なんてあるわけがない。
さて、認められるだろうか。
「ない? 一体どうしたの?」
「追いはぎに、盗まれて……。この町に近かったのが不幸中の幸でした」
適当に理由を作る。
これなら、確認のしようも無いし、怪しまれる可能性も少ないだろう。
汚い服装なのも通用するはずだし。
「そうか……。それは災難だったね。それじゃあまずは、この町で働いて稼ぐしかないね。必要な物は買わなくちゃ」
どうやら上手く騙されてくれたらしい。
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