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過大な期待は、大きな絶望へと変わる。 「焦ることはない」と律子に言われたが、私の焦りは日々強くなっていく。 生まれた律子の赤ちゃんを見ると、胸が苦しくなってしまう。 私の中の醜い心が嫉妬心を生み出した。 律子だけでなく、母親になっている周りの友人たちにも激しく嫉妬した。 お母様から頻繁に電話が鳴るようになり、私へのプレッシャーは日増しに強くなった。 「早く検査に行ってちょうだい。子供を産めない嫁なんていらないわ!」 ある日お母様はそう言い放った。 私は、子供を産むために颯と結婚したわけじゃないのに。 悲しかった。 同時に、ひどく惨めだった。 「お互い焦り過ぎているかもしれないな」 夕食を口にしながら、颯はとても穏やかに言った。 「のんびりいこうな」 「何かあったの?」 急な話に、私は箸を休める。 「父さんに言われたんだ。母さんが香純にしょっちゅう連絡してるみたいだからって、気にしなくていいからな」 「うん……」 颯のお父様と颯の優しさに、私の心は少しだけ軽くなる。 「俺は子供は欲しいけど、香純がそばにいてくれるだけで幸せだからさ」 「颯……」 颯に無理をさせている。 病院に行かなくちゃ。 私は、 しっかりしなければいけない。 .
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