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颯に本当のことを告げることができないまま、数日が過ぎた。
そろそろくるだろうと思っていた矢先、お母様からの電話が鳴る。
「香純さん、病院は行ったのかしら?」
一瞬嘘を言おうかと思った。
しかし、隠したところでいつか病院に連れていかれるに違いない。
「はい、行きました」
私は医者に言われたことをありのまま話した。
次に言われることが、どんな言葉か、わかっていたけれど。
「別れてちょうだい」
たった
一言だった。
繋がらない受話器を耳に当てたまま、抑えきれない感情が溢れ出し、
私はその場に泣き崩れた。
私が私じゃなければ。
これからもずっとずっと颯の隣で生きていけたのに。
こんな体、
なくなってしまえばいいのに。
「颯……颯……」
私じゃない他の誰かと再婚すれば、颯はきっと幸せになれる。
可愛い子供を授かり、たくさんの愛を注いでその子を守り抜くだろう。
だけど私は、
颯にその幸せを与えてあげられない。
私は幸せな夢をみていただけ。
結婚なんて、幻だったんだ。
忘れてしまおう。
何もかも。全部。
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