6/7
前へ
/37ページ
次へ
「何これ……」 見慣れた病院名の書かれた封筒の中身。 それは病院での検査結果だった。 「香純じゃないんだよ」 中から取り出した書類に綴られた文字を、目でゆっくりと追う。 「颯。精子が……」 無精子症。 そこにはたしかにそう記されていた。 私だけではなく、颯にも原因があったのだ。 「子供、俺のせいでできないんだよ」 そう言った颯は、とても嬉しそうに笑う。 「どうして笑うの?」 嬉しくないじゃない。 悲しいことだよ。 「香純のせいじゃなくて良かったって、心の底から安心したんだよ」 鼻がツンとして、胸が痛いほど締め付けられた。 「そんな優しいこと、言わないでよ」 目からは涙が溢れ出し、私は壁にもたれかかり声をあげて泣いた。 『颯のせいなら良かったのに』 私は本気でそう思った。 なんて浅ましいことを考えていたのだろう。 傷つきたくなくて、だから颯が悪者になればいいと思った。 「俺は0%。香純のほうが俺より可能性あるだろ?だから俺のせいだよ。悪いのは全部俺だから」 座り込んだ私を優しく包み、颯は自分が悪いと繰り返した。 .
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1018人が本棚に入れています
本棚に追加