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「バカだよ。颯はバカだ」 ぼんやりと霞む視界の先に、颯が揺れる。 私の心配なんて、しなくたっていいのに。 「香純は自分を責める必要なんてないんだよ。何も悪くないんだから」 嬉しかった。 とてもとても嬉しかった。 「でも……」 同時に醜い自分に対する腹立たしい気持ちがこみ上げた。 「私、颯のせいならって思ったの。そんな、最低の女なんだ」 私の発言に、颯は顔色ひとつ変えずにいる。 どうして? どうして笑っていられるの? 「愛してるから」 「え?」 「俺は自分より、香純のことが大切だから。香純が自分のことを責めて傷つくことが一番辛いんだ」 「愛してる?」 こんな私を。 「子供ができなくたって、2人でいれば幸せだろ?」 言葉にして「ありがとう」を言う余裕なんてなくて、 颯の胸に顔をうずめて私は泣いた。 颯にこんなに思われていた。 強く強く、愛されていた。 「ごめんね。ごめんなさい」 颯 ありがとう。 そして、 私もあなたを愛してます。 .
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