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「いつものところ寄って行く?」
颯の言ういつものところとは、私たちが毎年この日に寄る教会のことだ。
毎年の恒例になっている。
「あれ?何か置いてある」
教会の中に入ろうとした時、颯が何かを見つけた。
「なに?」
ダンボールの前にしゃがみこむ颯の後ろから、あたしも顔を覗かせた。
「犬?」
まん丸の真っ黒な目をクリクリさせて、私を見上げる小さな小さな犬。
「捨て犬だなあ」
颯が優しく抱きかかえると、しっぽをぶんぶん振って喜ぶワンちゃん。
白い雪を身にまとい、ひとりぼっちでさっきまできっと震えていたはず。
「このままここに置いていくのは可哀想だよね」
私が言うと、颯は当たり前だと言わん顔で
「今日から俺たちの家族だ」と笑った。
「サンタさんからの贈り物だね」
子供のできない私たちに、サンタクロースからのプレゼントだと、
私たちは今でも本気でそう思っているんだ。
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