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「おかえりなさい。今日もお疲れさま」 玄関先でカバンを受け取り、仕事が終わりネクタイを緩める颯に笑顔を向けた。 結婚して半年が過ぎ、季節は夏を迎えようとしている。 新婚旅行で行ったヨーロッパの思い出がまだ真新しい記憶として鮮明に思い出せるというのに、時は知らぬ間にすぎてゆく。 幸せだから季節の巡りが早く感じるのだろうか。 そんな疑問が浮かぶほど、毎日がとても幸せだ。 習い事に通い、時々友達と遊ぶ。 気晴らしにエステに通い、ネイルサロンで爪の手入れをする。 贅沢な暮らしができるのも、全て颯のおかげだ。 「コウヘイのところ、子供生まれたって」 食後のコーヒーを口にしながら颯が言った。 コウヘイくんは、颯の大学時代の友人のこと。 颯とは同じサークルで、夜な夜な飲み歩いたいわゆる悪友というやつだ。 「女の子だって。お祝い持って行かなきゃな」 「うん!可愛いだろうなあ」 コウヘイくんと奥さんの顔を思い浮かべ子供の顔を想像すると、 目がパッチリとした色白の可愛らしい女の子が浮かび、思わず口元が緩んでしまう。 そんな私の隣で、颯が優しく目尻を下げ穏やかな表情をした。 きっと将来私達が授かる子供のことを考えているのだろう。 颯は子供が大好きで、結婚する前から子供はたくさん欲しいとよく口にしていた。 私も負けないくらい子供のことが大好きだ。 中学生の時、保育士に憧れていたこともある。 「早く子供が欲しいね」 私がそう言うと、颯は嬉しそうに笑った。 絵に描いたような幸せな夫婦。 描く未来はキラキラ輝いて、 幸せの色に染まっている。 真っ白なキャンバスを塗りつぶすのは、 私? それとも。 .
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