3/5
前へ
/37ページ
次へ
いつもと変わらず朝食を済ませ「いってらっしゃい」と颯を送り出し、部屋の掃除と洗濯をする。 それからメイクをして、親友である律子との待ち合わせ場所に向かった。 律子と出会ったのは中学生の時だ。 身長の高い私と、小柄な律子はでこぼこコンビというアダナがつけられるほど、いつも一緒だった。 大学の付属中学に通っていた私たちは、大学卒業までの長い月日を共に過ごした。 楽しいことは2人で2倍に変え、悲しいことは半分ずつわけた。 今では互いに一番の親友と呼べる仲になった。 待ち合わせ5分前。 人混みの先に律子の姿を見つけた。 「律子!」 私は小走りに律子に駆け寄ると、律子は大きくなったお腹を優しくさすりながら「結婚式以来だね」と笑った。 パスタが美味しいと評判の店に入り注文を済ませると、昔話に花を咲かせた。 お互いが主婦になり、それぞれ別の生活を持っている今、昔のように頻繁には会えなくなってしまったが、変わらない関係がそこにはあった。 「楽しみだね、赤ちゃん。男の子と女の子どっちがいい?」 「うーん。どっちでもいいかなあ。無事に生まれてくれるなら」 愛おしそうに我が子を見つめる律子は、すでに母親の顔をしていた。 「日に日に大きくなっていくの。あたしの中で少しずつ。それが嬉しくて」 「律子、お母さんになるんだもんね。母親になるって、すごいことだよね」 数年前の私たちは、母親になることなんて想像もつかなかった。 自分のことだけで精一杯で、恋人のことすら考えられない時期もあった。 .
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1018人が本棚に入れています
本棚に追加