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夏が終わり秋になり、冷たい風が冬を運んできた。 そんな中、律子が可愛い女の子を出産した。 生まれたばかりの我が子を胸に、涙が出たと律子は私に教えてくれた。 一足先に母親になった律子を、私はどこかで羨ましいと感じている。 私はまだ、 子供ができない。 「結婚1周年おめでとう」 グラスを傾け、2人で乾杯をする。 お祝いのシャンパンに、色とりどりの豪華な食事。 美味しそうな香りが漂う。 「クリスマスと結婚記念日が一緒にお祝いできるなんて幸せだね」 颯と結婚して1年がたった。 美しい景色が一望できるレストランでのひととき。 「本当は3人で来たかったね」 颯と私と、 私たちの赤ちゃんと。 「なかなか子供できないな」 シャンパンを飲み終え、ワインを口にしながら颯は苦笑い。 「早く欲しいね」 私はまだぺったんこなお腹をさすった。 膨らむ気配すらない。 内心、 私は焦っていた。 そして、 怖かった。 妊娠しない理由が自分にあったらどうしようと、 不安で不安でたまらなかった。 .
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