白のち城

3/8
前へ
/10ページ
次へ
     それにしても奇妙だ。上半身に着る服と下半身に着る服が一体になっているだけでなく、まるでスカートのように又に折り返しがない。  女に間違われたか。  一瞬思ったが違うだろう。  子供の時分ならいざ知らず、今の俺はどこからどう見ても男である。  第一、男物の鎧を着ていたのだ、間違えるはずなどあるまい。  ならば、やはり技術部の新しい発明品だろう。  奴らに実験体にされたようで気味が悪いが、それはこの際置いておくとして、今は自分が目覚めたことを誰かに知らせることが、やるべきことだろう。  扉を開けると、長い廊下が続いていた。一見して人の姿は見当たらない。  しかし、妙だ。  見たことが無い。 「ここは……どこだ?」  突然、不安感が襲ってきた。  まさか、敵国に捕らえられたか。  あんな王国の内地まで知らぬ内に敵に入り込まれていたのか。  敵国に捕らえられたのならば、見たことない、服に見たことない建物。すべて説明がつく。  珍しく、竜が群れを成していたが、いくら強いと言っても所詮は獣。それなりに人数を割ければ出し抜けぬことはない。  捕まったと仮定するならば、すぐに抜け出さなくては。 「ん?ちょっとちょっとちょっと困るよ、勝手に出られては」  人の気配すらなかった廊下から声が聞こえた。  咄嗟に剣を抜こうとするが勿論、腰に目当てのものは無い。  すぐに、拳を上げ臨戦態勢をとる。  先から火が見えた。  あれか……。  身体が緊張する。相手が剣を持っているならば、まともに戦うと、後手になる。  ならば、一気に近づき相手にその隙を与えず一撃で気絶させる。  魔術を使う手も考えたが派手にやりすぎる。  深く息を吐き、相手との距離を瞬間的に詰め、顔面に拳を入れる。 「え?」  相手の無防備な顔に吸い込まれるように行き、顎に当たり相手はそのまま床に叩きつけられた。  すぐに服を弄(まさぐ)り、武器を探すが、それらしき物がない。  そこで理解した。  俺はやってしまったのではないかという事に。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加