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それにしても奇妙だ。上半身に着る服と下半身に着る服が一体になっているだけでなく、まるでスカートのように又に折り返しがない。
女に間違われたか。
一瞬思ったが違うだろう。
子供の時分ならいざ知らず、今の俺はどこからどう見ても男である。
第一、男物の鎧を着ていたのだ、間違えるはずなどあるまい。
ならば、やはり技術部の新しい発明品だろう。
奴らに実験体にされたようで気味が悪いが、それはこの際置いておくとして、今は自分が目覚めたことを誰かに知らせることが、やるべきことだろう。
扉を開けると、長い廊下が続いていた。一見して人の姿は見当たらない。
しかし、妙だ。
見たことが無い。
「ここは……どこだ?」
突然、不安感が襲ってきた。
まさか、敵国に捕らえられたか。
あんな王国の内地まで知らぬ内に敵に入り込まれていたのか。
敵国に捕らえられたのならば、見たことない、服に見たことない建物。すべて説明がつく。
珍しく、竜が群れを成していたが、いくら強いと言っても所詮は獣。それなりに人数を割ければ出し抜けぬことはない。
捕まったと仮定するならば、すぐに抜け出さなくては。
「ん?ちょっとちょっとちょっと困るよ、勝手に出られては」
人の気配すらなかった廊下から声が聞こえた。
咄嗟に剣を抜こうとするが勿論、腰に目当てのものは無い。
すぐに、拳を上げ臨戦態勢をとる。
先から火が見えた。
あれか……。
身体が緊張する。相手が剣を持っているならば、まともに戦うと、後手になる。
ならば、一気に近づき相手にその隙を与えず一撃で気絶させる。
魔術を使う手も考えたが派手にやりすぎる。
深く息を吐き、相手との距離を瞬間的に詰め、顔面に拳を入れる。
「え?」
相手の無防備な顔に吸い込まれるように行き、顎に当たり相手はそのまま床に叩きつけられた。
すぐに服を弄(まさぐ)り、武器を探すが、それらしき物がない。
そこで理解した。
俺はやってしまったのではないかという事に。
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