白のち城

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    「そういえば……、ここはどこなのでしょうか?」  単に国の名前を何だ、と聞くよりも“ここはどこなのか”と少し曇らせて聞いた方が良い。  少しでも頭の回る人なら、曇らせて聞くことで自分の持つ何らかの情報と結びつけ、自分の聞きたい情報を教えてくれる。 「え……?いや、それもそうですね」  こんな感じに。 「ここは東坊城(ひがしぼうじょう)王国。大陸の西の端に位置する王国です」  ヒガシボウジョウ王国など聞いたことも無いのだが、西の端と言ったか。  あそこは確か、小国家がいくつも乱立していると聞いた。  その内の一つか。  そんな小国家の軍人にあの竜の群れを倒すだけの力があったのか。  西の端だと祖国に行き着くまで、二年は掛る。  国や俺はそれほど近づいてきた軍勢に気付けなかったのか。  なにより、俺は年単位寝たきりだったのか。  考えられない事で、信じられない失態だ。 「貴方がここに運び込まれたとき、それはひどい怪我を負っていました」 「怪我?それはどの程度でしたか?」 「えっと。打ち身から骨折、重度のやけどまで。いったい何をしたらあのようになるのか不思議でした」  痛かった記憶はある。  途中で剣を持つことさえも難しかった。  医療従事者が不思議に思うような大怪我を放っておいて無事でいるはずがない。いったいどういう事だ。  第一、西の端まで辿り着いた俺がなぜ、未だ怪我を負っていたんだ。 「すべての治療が終わるまで丸三日間。貴方はその後五日間、寝続けていました。脅威の回復力ですよ。あれほどの大怪我をまさか、これほどの日数で完治させ、あまつさえ私を殴り飛ばすほどの運動をしたのです。こちらの見立てでは十五日間は寝続け、身体が元の調子に戻るには年単位の月日が掛ると診ていたのですが、貴方はほぼ完全に回復したようです」  矛盾点がありすぎる。大陸の西の端にいるはずなのにどうやって、俺は怪我も回復せずにここまで連れてこられた。  重度のやけどや骨折がなぜ、三日で完治するのか。  見渡せる限り、やけどの痕さえない。  こんな簡単に分かる嘘をつくメリットは何だ。まさか、暗号か何かか。  やはり、情報が少ない。
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