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『いやー』
『やめて、お願いだから』
『アツイアツイアツイ』
ローストしてる間、ずっとこんな調子。あんまりにもうるさくて、イライラする。
『どうしてこんなひどいことを……』
『ひっく……痛いよぅ』
ちょっと刻んだだけじゃないの。舌打ちをしてから材料をボウルに入れて混ぜ合わせていく。バター、粉糖を切るように混ぜ、薄力粉、一つまみの塩を加え、さらに混ぜる。混ぜる。そして先ほど刻んだ知恵の胡桃を……。
『ひぃっ』
『やーめーてーそんなにこねないでー』
「黙りなさい」
知恵を持ち、言葉を操る胡桃は調理がとても大変だ。でも、他の胡桃よりも断然おいしい。
バニラエッセンスの甘い香りに癒されながら、焼き上がるまでは少し休憩。胡桃が何かわめいているけれど、それは無視。
知恵の胡桃クッキーが焼き上がり、ほどよく冷めた頃……。
「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」
子供たちがやってくる。
『うわっ、ちょっ』
『食べないで食べないで』
『せめて味わって……』
最後の最後までわめいているけれど、胡桃の声が聞こえない人間の子供はもとより、魔物の子供も、お菓子に夢中で気にもとめないのだった……。
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