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その時姉様は、白バラの咲き誇る庭園で読書をしておられました。気高き白バラに囲まれてなお、姉様の美しさは見劣りすることなく、かえって輝きの増すばかり。妹の私でさえもため息を吐かずにはいられません。
姉様は私に気が付かれて、ふわりと、まるで木漏れ日の中、やわらかにほころぶ繊細な蕾のような、そんなぬくもりある微笑みを向けてくださいました。
私はなんだか嬉しくてたまらなくなり、姉様のもとへと駆け出します。姉様は読みかけの書を膝に置き、私をまっすぐに見つめて待ち受けてくださいました。
しかし、元来そそっかしいところのある私はこの時も、姉様のもとまで辿り着く前に足をもつれさせ、転んでしまいます。
姉様の驚いた表情。書がばさりと地面に落ちてしまったのにも気が付かないご様子で、姉様は血の滲む私の膝小僧を撫でてくださいました。透き通るように白くてしなやかな手が優しく揺らめきます。
――白バラは赤い血に恋い焦がれているの。だから、気を付けなくてはだめよ?
そう言って、姉様は愛しむように私の膝小僧を、いつまでもいつまでも撫で続けてくださいました。
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