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「……うるさいっ! さっさとどいてよ!」
――大泣きだった!
瞳から輝く雫をこぼす。
唾が散る。
慌てて横にずれ、道を譲ってあげると、神撫さんは僕を見て、次に道人を向き、また僕を見ると、さらに雫の量を増やし、顔をくしゃっと歪めると、走り去ってしまった。
僕の腕に、彼女の肩がぶつかる。
なんだったんだろう……腕に残った感触が、妙にやわらかい。
「まあ、気にするな。どうだ昼食で――」
そのとき、道人のケータイが震えた。
「またか……」
ディスプレイを見る彼の表情は、とても暗い。
どうしたんだろう。そう首をかしげていると、彼はケータイをしまい、僕のほうをちらりと見る。
「すまんが……」
申し訳なさそうに眉を寄せる。1人で帰ってくれと言うことなんだろう。
「いいよ、用事、終わったら連絡してよ。ガストで時間潰すし」
「すまない」
もう一度僕に詫びを入れ、教室を飛び出す。
こうして僕は1人ため息をつくのだった。
腕の感触が忘れられない。
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