Ⅰ.嵐の転校生と最高の因縁。

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深くため息をついた。口からあくび混じりに零れるのは、いつもと同じ文句。 「退屈だ」 嫌味なくらい綺麗に晴れ渡った秋の空を、頬杖をついて見上げる。 少し汚れた窓ガラスの外に広がる、青の世界。 あの向こうに、天国だか極楽浄土だかがあるのだろうか。 どちらでも構わん、是非とも今すぐそこに行きたい。そして昼寝したい。 ――とまあ、そんな消極的思考に陥ってしまう、高校一年目、二学期初日のホームルームなのである。 「村崎ー、聞いてるかー?」 放任主義な我らが担任、いけちゃん(本名は忘れた)に名指しで呼ばれ、「はいはい、聞いてますよ」とおざなりに返す。 もちろん、なにも聞いてはいなかったが。 今日は夏休みの課題を提出すればオッケー。さっさと帰らせてほしい。眠いし。いや待て、放置していたゲームでも久々にするか。 なんの変哲もない男子高校生が考えることなんて、そんなもんだ。 周りはなにやら楽しそうにわいわいがやがや、夏の思い出を語りあったりしていやがるが――彼女? 部活? はっ、笑えるほど縁遠いわ。9月のはじめなのに日焼けすらしてないからな、俺。 「よーし、じゃあみんなお待ちかねの、転校生を紹介するぞー」 「おおーっ」と盛り上がるクラスの方々。 え、なに、転校生? 聞いてねえよ――って聞いてなかったからか。 教室のなかがざわめき、「男? 女?」などとの疑問の声が飛び交う。かしましい奴らだ、転校生ごときで。 まあ、俺もちょっとは気になるが。 妙な期待と緊張感が漂うなか、教室前方のドアが開かれ―― 「……ん?」
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