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人通りのない一本の林道は、昨夜降った雪により純白に染まり、足跡1つ無かった。
しかし、馬車の車輪と思われる2本の線がうっすらと残っているのがわかった。
早朝のものだろう。
馬の足跡からして、自分達と逆方向に向かって行っている。
「おかしいな……あっちは平原しかないから危ないのに……」
ティアがそう呟いた後、林の中が何の前触れも無くしんと静まり返った。
雪だ。
ちらりと覗いたそれは、林の木々を通り抜け、ふわりと小さな少年の頬にたどり着く。
灰色の空に目を向け見つめている紅玉の瞳の少女は途端にハッと気付いたように馬車が通った先の道をじっと穴が開くほど見つめた。
その視線の先を追い耳を澄ますと、静まった空間に雪を軽快に一定のリズムで踏みしめる音が微かに聞こえてきた。
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