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徐々に白い景色からぼんやりと現れ始めた何かは少しずつ自分たちの方へ近付いて来る。
警戒した少女はティアの背に隠れ、服の裾をきゅっと掴んでは様子を伺う。
近付いてきたものは二頭立てで黒塗りの大型4輪馬車だった。
いかにも豪勢な金が掛かっているような馬車だ。
貴族か何かが乗るようなものである。
窓辺から僅かに見えた、はっと息を呑むような女性の青い目がこちらを捕らえていた。
「……ハルト」
箱型の馬車の中から一声だけ聞こえた。
すると大きな馬車は重たい音を出して2人の前に停まり、馬も随分と利口に自ら停車する。
馬車の扉が鈍い音をたてて開くと一人の女性が降りてきた。
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