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「道に迷ったのだ」
質問に応えたのは、意外にもルビィだった。
それに続いてティアも話す。
「迷ったというか……幻綜院に行きたいのですが、道がよく分からなくて困っているんです」
「……幻綜院に?」
彼女は怪訝な顔をさせて聞き返し、意外そうな表情で少年を見た。
「はい、そこに行きたいのですが……僕はティア・リバイバルです。この子はルビィ」
「ティア・リバイバル……?そうか、お前が……」
ティアが話し終わった途端、名前を聞いた彼女は驚き、そう言いまじまじと少年を見た後、その背に隠れている赤目の少女をちらりと見ればふうと白い息を吐いた。
少女は睨むでも見詰めるでもなく、ただ警戒した様子で隙間から紅い瞳をぎらつかせて凝視していた。
「馬車に乗れ。そこまで送っていってやろう」
「え、いいんですか?」
戸惑いと嬉しさの混じった顔で問い掛けると、彼女は背を向け歩き出し、「乗れ」と言うような顔で振り返った。
ティアはそれを見るなり焦ってルビィの手を引いて馬車に乗り込んだ。
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