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アタシと彼はしばらく会話をしなかった。
「気をつけて帰ってね。
子供さんいるんだから
もうこんなことしないように…」
優しく看護師に見送られ
アタシは子供二人と
彼の車に乗り込んだ。
「迷惑かけて・・・ごめん」
そう一言言うのが精一杯だった。
アタシは身の置き所がなく
シートにすっぽりうづくまり
窓硝子に頭をもたげて目をつぶった。
昨夜のやり取りを思い出す度に
苦い思いと二度と戻れない現実に
記憶を無くしてしまいたいほどの後悔と
よしきに対する懺悔の気持ちが溢れ
今自分が生きていることが
とてつもなく汚らわしい気がした。
瞼を閉じれば
あの時の様々な場面が
次々とクラッシュするように
鮮やかに甦り
なんともいたたまれない気持ちに
涙は枯れることはなかった。
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