☆夢の終わりに…☆

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心理療法士は黙って アタシから目を逸らさず 頷きながら聞いていた。 表情をまず崩さない 淡々としたカウンセラーだ。 言葉も短く、小さい声でゆっくり話す… いつも聞き役に徹し 患者の思いに根気よく耳を傾ける。 アタシが一旦黙り ハンカチで涙を拭いていると 「そう思えるようになったのは 少し前を向いてきたことですね」 短くそう言った。 人間の回復力 傷を修復する能力… それは本人に元々備わっていることであり 生命力の強さだろう 勿論その修復時間は 傷の深さや内容 そして人それぞれに違うと思う。 一日一日と人は 気持ちも変化し 前へ進めることもあり 時には後ろ向きになることもある。 足踏みしたまま 何日もそこから進めない日もあるだろう 毎日違う気持ちに 戸惑いながらも ほんのわずかでも 明るい光を求めて 人は笑顔の裏に 悩み、苦しみを沢山抱え それでも与えられた命を 全うしていくしかないのだ… よしきとあおいの 葛藤や苦しみもまた アタシが想像する以上に 過酷で深い傷を 彼らに残したのではないだろうか… 誰が悪いのではない これは避けて通れなかった アタシ達3人の運命 そして人生のハードルだったのだ。
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