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名義変更の手続きを済ませた後
近くのファミレスにアタシ達は向き合って座っていた。
大晦日まで後数日というのに
アタシのような暢気な主婦が
大掃除途中で放り出してきてるのか
意外にも女性客が多かった。
コーヒーを一口啜ると
秀人は言った。
「僕ね・・・・・
結婚しようと思ってるんだ…」
・・・・・・?
咄嗟のことにアタシは飲みかけていたココアを
吹き出しそうになった。
「ちょっと…いきなりどうしたの?
…てか誰と?」
別れてから電話で話したことは何度かあった。
今までそんな話一言も聞いてない…
いつの間に・・・・?
アタシは正直動揺していた。
なんやかんや言っても
この人はアタシの側にいてくれる…
そんな漠然とした安心感を持っていた。
それが・・・
結婚???
大切にしていたものが
スルリと音もなく
風にでも吹かれて
どこか手の届かない処へ
逃げて行ってしまうような…
呆気に取られて
ただそれを見ているだけで
追い掛けようにも足がすくんで
身動きできない自分を
瞼の裏に夢の残像のように描いた。
時間だけが止まり
一人異空間に取り残されたような焦燥感…
ほんの一瞬周りの音が途切れた気がして
それからアタシは我に返った。
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