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クドウユウサクは保健の担当だった。そして今日、保健は一時間目。煮えたぎるような怒りを内に秘めた俺とゴン太は、獲物を狙う虎のような目つきでクドウユウサクの現れるのを待っていた。ゴン太に至っては少し唸っていた。
そして、それでなくともクラスの不良達も新たな教師の実力を伺い知るために不穏な目つきを投げている。新任の教師に取ってこの高校、取り分けこのクラスは試練の場なのだ。
ガラッ!
教室の扉が開いた!
そしてユウサクが入ってくる。
全校集会の時と違って、灰色のスーツと焦げ茶のズボンだった。そして相変わらずグラサンを掛けていた。
野郎…教室にグラサンとは良い度胸だぜ…!
クドウユウサクは教壇につくと、何も言わずにチョークを掴み、ガリガリと名前を書きなぐった。
工
藤
優
作
字はうまかった。
ま、教師になるくらいだから当たり前なのか…。
優作はグラサンを外した。細く鋭い二重の眼は、太い眉と相まって凄みが効いている。
「工藤優作だ。よろしく頼む」
優作の目つきの鋭さが予想以上のスゴみを帯びているため、クラスの不良は容易に絡もうとしなかった。不良も優作も互いに睨み合っていた。ゴン太に至っては少し唸っていた。
「ぐるるるる…!」
緊迫した雰囲気。張り詰めた空気。一触即発。今にも争いが勃発しそうだ…。
すると、優作は突然ルミナちゃんの方を向いた!
ドスの効いた目つきをルミナちゃんに突き刺す優作。ルミナちゃんはドキッとして、おろおろし出して何だか怖そうだ。
おのれ…この外道…!
このような可愛いおなごにまでその鋭い牙を向くとは…!
Let's 許すまじ!!
「貴様…」
優作は突然口を開いた。ルミナちゃんに貴様とは何事!
「は…はうう…」
ルミナちゃんは困り果て、泣きそうだ。このクソ野郎ッ…!
「貴様、保健の教科書を忘れてきたのか?」
む?
「あ、あのっ…わたし転校してきたばっかりで、まだ教科書揃え切れて無いんです…。特に保健とか…」
ルミナちゃんが言うや否や、クラスの不良達が一斉に騒ぎ出した。
「うおおお!ルミナちゃん、俺が見せてあげるよッ!」
「いやいや、俺が見せたげるッ!」
「ああん!?ワシの方が保健に詳しいんじゃ!すっこんどれボケ!」
「黙っとれこの短小包茎どもが!俺が見せたるわ!」
しかしさすが不良、誰一人として教科書を持ってきてる者は無かった。
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