優しさのチカラ

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彼は今度は素早く首を水中へ突っ込んだ。 顔をあげた彼のクチバシには巨大なナマズがくわえられていた。 彼はナマズを高く掲げながら首を傾げ、半目でボビィを見下ろした。 ボビィは笑いながら「なるほど。小さな魚は小さな私の分で、大きな君にはその大きなナマズってことだね!驚いたな。君のユーモアのセンスには。」 彼は目を閉じ細かく頭を上下に振った。それは笑っているようだった。 ボビィは魔法のモリと流木で火をおこし、魚を焼いた。 ナマズをついばむ彼にボビィは「君は名前はあるのかな?」と尋ねた。彼は羽にある鉤爪で首輪を指差した。 「……そうか。でもそれは個体名だね。私はそれで君を呼びたくないな。」 彼は少し首を傾げ、鉤爪でボビィを指差し、その後自分のこめかみであろう部分を指差した。 「なるほど。だったら私が名前を考えろと言うんだね?」 彼は頭を縦に振った。 「わかった。」ボビィはしばらく考えた後、「……難しいな。気に入らなければ変えるけど『セブ』はどうかな?」 彼は細かく縦に頭を振った。気に入ったようだった。 「よかった。では改めて。私はボビィ。よろしくセブ。」 セブと呼ばれた彼は目をパチパチさせて頭を振った。そしてそのまま食べかけのナマズをくわえ、ボビィに差し出した。 ボビィはまた笑いながら「お礼なんかいらないよ。さあ、セブにもらった魚が焼けたようだ。食事を続けよう。」 セブは頷いて差し出していたナマズを置き、再び食べ始めた。 「セブ。私と一緒に旅をしないか?」 ボビィは魚を食べ終わるとセブにそう聞いた。 セブは最後に残ったナマズを丸呑みにし、静かにボビィをみつめた。それは悲しげな眼差しに思えた。 「ここにいるといつかは研究所に頼まれた冒険者がセブを捕らえにくる。長くここには居られない。」 セブは少しも動かず、目を閉じてボビィの話しを聞いていた。 「セブはもう研究所に戻りたくないだろう?私と旅をするのは嫌かな?」 セブは目を閉じたまま頭を横に振った。 「では問題ないな。私はセブが気に入ったんだ。この洞窟を出ていろんなところにいこう!」 セブは目を開きボビィをみつめた。やはり悲しげな眼差しであった。 その時、凄まじい振動が洞窟を揺らした。天井にあった鍾乳石のつららが落ち、足元で砕けた。 「セブ!大丈夫か!?」
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