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どーんという振動が続き、鍾乳石と共に水が落ちてきた。
「セブ!ここにいたら危ない!!表に出よう!!」
ボビィはセブの翼を引っ張った。セブも引かれるまま横穴の入り口へと潜っていった。
横穴から出た瞬間、ボビィは渦に捕まった。
ティアマットは横穴の上で岩を叩き、獲物がでてくるのを待っていたのだ。
…ぐっ!
だが、すぐに渦の勢いは弱まった。
ティアマットは縄張りに侵入した敵を発見したのだ。
…くそ!セブが危ない!!
ボビィは魔法のモリをかざしティアマットに衝撃波を飛ばした。
衝撃波は首の1つに当たり、ティアマットの体が横倒しになった。
…セブ!今のうちに……
ボビィはセブのほうを見て愕然とした。
数頭のドラゴンと大型の水棲の魔物がセブを囲み、体のあちこちにを食いついていた。
体制を立て直したティアマットもすぐにセブのほうへ向かって泳ぎだした。
セブは竜族のような姿をしてはいたが、やはり竜族や他の生き物とは違っていた。研究所を逃げ出した時からセブの体に潜んでいる兵器としての血を、すべての生き物は忌み嫌い、あるいは攻撃の対象とした。
それでも研究所を逃げ出したのはセブがその血のせいで研究所の人や動物を傷つけてしまうのを恐れたからだった。
…ボビィ…逃げて…来ちゃ駄目だ…
助けようと近寄るボビィの頭に声が響いた。
…セブか!?君の気持ちが伝わってくる!待ってろ!すぐに助けるからな!!
…駄目だ…ボビィ逃げて…もうすぐセブはセブじゃなくなる…
ボビィはモリと攻撃魔法でドラゴンを引き剥がしにかかった。
そんなボビィに向かってセブは鼻からリング状の気泡を飛ばした。リングはあっという間にボビィを覆い、おおきな気泡の中にボビィは閉じ込められた。気泡は徐々に浮かびあがった。
「セブ!!!!?どうしてだ!?出してくれ!一緒いこう!」
ボビィは気泡を破ろうと必死になったが破れなかった。
…セブはセブでなくなる。ボビィを傷つける。駄目だ。
「セブ!!頼む!出してくれ!」
セブの首にティアマットが噛みつき、肉を食いちぎった。セブの意識は遠のいた。
その時、セブの優しく強い意識で細胞レベルまで抑制されていた兵器としての血が、徐々に暴走を始めた。
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