20人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほら、どうしたんだよ『鎖球の忠犬』さん? 大口を叩いてた割には大した事ないじゃないか」
フォーレスの神経を逆撫でしつつ、しかし絶妙な距離を取りながら小刻みに跳ねるキルバ。
(いい加減にしろよ……!)
流石に苛立ちが募り、フォーレスは若干本気でキルバを相手取ろうと思った。
「だが……時間切れだ」
突如キルバは不敵に笑い、右足を軽く持ち上げる。
そして、勢いよく地面を踏みつけた瞬間
フォーレスの目の前が、真っ赤になった。
「なっ、ぁああ!?」
なんの前触れも無しに地面から噴き出した炎。それを全力で後方に飛び退く事で回避し、裏路地をゴロゴロと転がるフォーレス。
「まっず……!」
こんな無防備な体制で転がっては危険極まりない。そう考えて、無理矢理に体を起こして前方を見据えて。
「……あ、れ?」
目の前にあるのは徐々に勢いを失っていく炎だけで、キルバの姿は無かった。
「逃げられたーー!!」
仔狼の叫びが、街中に響き渡る。
鳴動する空気に乗って、その音は雲にまで届いた。
――――――
最初のコメントを投稿しよう!