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ラミナルの中でも割と盛んな場所として有名な国 ハルパティア。
そこの首都を担うアイバークという街に存在している酒場には、今日も獣と雄とビールの臭いが充満している。
その中にあるテーブルの一つに腰掛け、小さなブランデーの瓶を手の中で弄んでいる狼獣人の少年がいた。
羽織っている濃紺のマントが灰色の毛並みを強調している。
どうみても、酒を飲める年齢とは思えないくらいに幼い顔と体躯である。
「あ、お姉さんお姉さん。ビール一杯、お願い出来ないかな?」
見た目に相応しい声音で、近くを通った店員の鹿獣人を呼び止める。
しかし呼び止められた店員の方は、見た目に相応しくない台詞に対して怪訝な視線を向ける。
「……キミ、どうみても18歳には見えないけど。大体12歳……よくても14歳くらいにしか見えないんだけどなぁ?」
「あー。みんなしてそういう事言うんだから! 確かに成人してはいないけど、僕は15歳だよ!」
「ハイハイ。どちらにせよ、此処はお子様の来る場所じゃありませんよ」
「お子様なんかじゃない! ちゃんと、こういう物も持ってるんだからね?」
そう言って少年が懐から何かを取り出し、店員に見せつけた。
瞬間、その表情が一気に驚愕に染まる。
「え……それは……!」
「ふふ、わかったら早くビールを持ってきて頂戴。ちゃんとお金は払うからさ」
「わ、わかりました」
取り出された物は即座に懐にしまわれ、同時に店員はカウンターへと向かう。
その鹿獣人を目で追いながら、少年は溌剌とした笑みで顔を埋め尽くしていた。
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