ぷろろーぐ!

2/4
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
   ラミナルの中でも割と盛んな場所として有名な国 ハルパティア。  そこの首都を担うアイバークという街に存在している酒場には、今日も獣と雄とビールの臭いが充満している。  その中にあるテーブルの一つに腰掛け、小さなブランデーの瓶を手の中で弄んでいる狼獣人の少年がいた。  羽織っている濃紺のマントが灰色の毛並みを強調している。  どうみても、酒を飲める年齢とは思えないくらいに幼い顔と体躯である。 「あ、お姉さんお姉さん。ビール一杯、お願い出来ないかな?」  見た目に相応しい声音で、近くを通った店員の鹿獣人を呼び止める。  しかし呼び止められた店員の方は、見た目に相応しくない台詞に対して怪訝な視線を向ける。 「……キミ、どうみても18歳には見えないけど。大体12歳……よくても14歳くらいにしか見えないんだけどなぁ?」 「あー。みんなしてそういう事言うんだから! 確かに成人してはいないけど、僕は15歳だよ!」 「ハイハイ。どちらにせよ、此処はお子様の来る場所じゃありませんよ」 「お子様なんかじゃない! ちゃんと、こういう物も持ってるんだからね?」  そう言って少年が懐から何かを取り出し、店員に見せつけた。  瞬間、その表情が一気に驚愕に染まる。 「え……それは……!」 「ふふ、わかったら早くビールを持ってきて頂戴。ちゃんとお金は払うからさ」 「わ、わかりました」  取り出された物は即座に懐にしまわれ、同時に店員はカウンターへと向かう。  その鹿獣人を目で追いながら、少年は溌剌とした笑みで顔を埋め尽くしていた。 ――――――
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!