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――――――
「ありがとうございましたー!」
酒場のドアが開き、中から出てくる先程の少年。その頬は若干紅潮し、足取りもどことなく危なげになっている。
「ふふふふ。アルコールは手に入れた事だし、そろそろ標的を追わないとまずいよねぇ……。また空にしないように、後一口で終わりにしとこ」
左手に掴まれているブランデーの瓶を口元へと持って行きながら、仔狼は街の外へと脚を向ける。
――と
「おいボーヤ。ちょっと待ちな」
後を追うようにして酒場から出てきた数人の獣人。その先頭にいる牛獣人が、少年に銃を向けていた。
「てめぇ『鎖球の忠犬』だろ」
呼び止められても無視を決め込んでいた少年が、歩みを止めて後ろを振り返る。
少年の前方には、牛獣人を含め筋骨隆々とした雄獣人が5人。
「てめぇのせいで刑務所にいる仲間の敵討ちだ。覚悟しな……俺らの恐ろしさを教えてやるぜ!」
「僕急いでるんでまた今度に……って訳にはいかないよね」
はぁぁ、とあからさまにため息を吐いた少年は、ブランデーの瓶を持ったままで考え込む素振りを見せる。
「誰かに恨まれる心あたりは無いんだけどなぁ……。もしかして“銀狼盗賊団”の残党かな? いや、そういえば“エイーダ・バウル”のメンバーも全員は捕まえれなかったはずだし“ガーグル×ゴードル”の可能性も……」
「……馬鹿にしてんじゃないだろうな。俺ら“ドラバラム”の名前を忘れたとは言わせねーぞ!」
「“ドラバラム”? ……ぁあ、なんだ。君達は“ドラバラム”の一味な訳か。……あれ? でも“ドラバラム”はアルパレスの街を中心に活躍してたはずじゃ……」
「お前のせいで仲間のほとんどがいなくなったから、アルパレスには居辛くなったんだよ!!」
今にも猛突進してきそうな牛獣人を尻目に、少年はああ、そうだったんだなどと言う。
「兎に角、死ねぇえぇえ!!」
怒りに満ちた声と共に、銃の引き金が引かれた。
――――――
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