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ラミナルの主要国として数えられるハルパティア。その国境にある街イルバクートの入口に、1人の仔狼が立っていた。
「イルバクート……国境に位置する関係で昔から交易が盛んで、ハルパティアで一番美味しい酒を飲めるってので有名だけど。ふふ、ターゲットを探す前に、まずはそっちを楽しまなきゃだよね」
この世界では18歳以上を成人と定めているのにもかかわらず、明らかに10代前半としか思えない少年は嬉々とした顔で街に入る。
歩く度にちゃりちゃりと金属のすれる音が響き、首から下を完全に包んでいる紺のマントも相まって何とも異質な少年である。
「うーん。でも、僕はこの街の地図は持ってないしなぁ。誰かに酒場の場所を教えてもらお……あ、そこの猫獣人さん。ちょっとよろしいですかー?」
歩きながらぶつぶつと呟く少年の横を、丁度よく虎柄の猫獣人が通りかかる。真っ青なジーンズに黒いジャケットを羽織ったその男性に、少年は早速話しかけた。
「んあ? 俺か?」
「そうですそうです! あの、お聞きしたい事がありましてですね」
「?」
「この街の酒場ってどこですかぁ? 僕、美味しい美味しいお酒を飲みたくてここに来たんですよね~」
ニコニコとしている少年とは裏腹に、猫獣人の顔は若干引きつる。
「……まさかとは思うけど、キミ、もしかして成人してたりは」
「してるわけないじゃないですか。僕は特別なんですよっ、とーくーべーつー!」
「……まあいいか。俺も丁度行くとこだから付いて来いよ」
「本当ですか!? やったぁ!」
やれやれといった様子の猫獣人の後ろに引っ付き、少年は満面の笑顔を浮かべた。
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