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「へへー。お兄さんみたいな優しい人に出会えて僕は幸せです」
「煽てても何も出ないぞ。ほら、この店だ」
割と近くにあった酒場の中に入ると、少年はカウンター席に座ろうとした。
「っと待った。せっかくだし、奥のあの席に一緒座らねーか? なんだったら一杯ぐらい奢ってやってもいいぜ」
「え、本当ですかっ? なら、甘えちゃいますね」
猫獣人に誘われるがままに、少年は店の一番奥のテーブルに座る。その向かい側に猫獣人も腰を下ろすと、少年は一層輝きを増した笑顔で猫獣人を見つめる。
「なんかもう、本当に今日は幸運な日です! 今なら、お兄さんにならどんなお願い事を頼まれたって承認しちゃいそうですよ!」
「おいおい……案内にしてもそうだけど、そんなに大層な事をしてるわけじゃないぜ?」
猫獣人は苦笑を浮かべつつも、少年の笑顔につられるようにして楽しそうに返した。
「そうだ。せっかくだし、お兄さんの名前を教えて下さいませんか?」
「俺の名前? ……んー。キルバ・ロロットだ。キールって呼んでくれるといいさ。お前は?」
「僕はフォーレス・アウルっていいます。宜しくお願いしますねキールさん!」
そう言って、少年は前に手を差し出した。
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