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「フォーレス・アウルだと……?」
しかし、キルバはその手を取らずに、若干の驚愕が混じった表情でフォーレスに問い掛けた。
「? はい、今そう言ったんですけど……あ。それから、僕の事はフォルって呼んで下さいな」
「……フォル、か。……宜しく頼む」
険しい顔をしたキルバは、どこかぎこちない仕草でフォーレスの手を握る。当のフォーレスはそんな事には気づいていないようで、握手を返してくれた事に気を良くして締まりのない笑顔を浮かべた。
「フォル。ちょっと用をたしてくるから待っててくれ」
「ふぇ?」
言うが早いか、キルバは素早く席を立ち上がるとトイレに向かって歩いて行った。
「んー、まあいっか。今のうちにターゲットの情報を確認しとこ」
キルバの姿が見えなくなったのを確認してから、フォーレスはマントの下から紙束を取り出した。
「えーと、麻薬取引・窃盗・暴行事件等の犯罪を多数の街で犯した挙げ句、逮捕に来た保安官を悉く倒して逃げ回っている……か」
文字が羅列してあるそれに目を通しながら、フォーレスの右手はページを捲る。
「虎猫種の獣人、キルバ・ロロットか。ふふふ、その腕前は是非とも見せてもらわないとね――」
って、え?
キルバ・ロロットって……。
「あ――――っ!!!!」
フォーレスが探していた獣人がキルバだと気づくのと、虎柄の影が店を出て行くのとは同時だった。
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