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「ちょっと待ちやがれっ!」
フォーレスは勢いよく床を蹴りつけ、猛スピードでキルバの後を追う。しかし、店の外に出た時には既にキルバの姿は数十m程先にあった。走る速度が異様に速い。
「逃がしてたまるかよ……」
そう呟いている間にもキルバの背中は遠ざかるというのに、フォーレスは何故か立ち止まって片膝を着いた。
そして、マントから右腕をさらけ出し、手のひらを地面に押し付けて。
「“ヌル”!」
言葉を短く紡いだ瞬間、フォーレスの体は弾丸のような速さで走り出した。
姿が見えなくなる程ではないが、しかしキルバとの距離をあっという間に詰めていく。
「!? ック!」
後ろを振り返ったキルバの表情が驚愕に変わり、それまで直線的に街を駆けていた進路を直角に曲げて裏路地に滑りこむ。
「待てっ!」
フォーレスもそれを追い、裏路地に消えたキルバを捕まえようと細い路地に飛び込んだ瞬間、
フォーレスの鼻先に、拳が迫っていた。
「ぅおっ!?」
キルバが行動を逃走から戦闘に変えた事に驚きつつ、すんでのところで拳をかわす。
「……チッ。流石は『鎖球の忠犬』様ってわけか。大抵の奴らは今の不意打ちでのびるってのに」
フォーレスは崩れた体勢を立て直しながら前を見ると、適度な間合いを図りつつ、キルバはファイティングポーズをとるようにして足先で地面をつついていた。
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