小さなタカラモノ

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「あ~……… また人間食べてんの?」 呆れ顔で溜め息を漏らす、 蟲の王リグル・ナイトバグ。 「いいじゃない、別に」 「あ、リグルも食べる?」 死体を貪っているのは、 仲良しのルーミアとミスティア。 「いや、私は人を食べる妖怪じゃないからね。 ………ん?」 その死体に特殊な点を見つけた。 大きな腹が、動いてる………? そんなリグルに気付いたのか、 ルーミアとミスティアは 手を引いた。 「これって、もしかして子供?」 「………みたいだよ」 「どうしようか?」 三人(匹?)は子供が生まれる時の作業など、全く分からない。 しかし、その子供はまるでそうである運命が決まっていたかのように、 親の手を借りず体外へ出始めた。 三人は見守るだけしかしなかった。いや、出来なかった。 数時間の後、子供は自力で誕生を果たし、今、リグルが抱いている。 「どうする、その子。 ちっちゃくて食べごたえ無さそうだけど」 「そだね」 この二匹は人間イコール餌として考えているようだ。 リグルは苦笑いをした。 何だかんだ言っても彼女も妖怪、 二匹の気持ちはある程度理解できるからだ。 「ん、じゃあ私達で大きくなるまで育てよう! 『ベーコンとクリスマス』の 魔女みたいに」 ルーミアが笑顔で提案した。 彼女が言っている物語は 恐らく『ヘンゼルとグレーテル』だろう。 「じゃあ名前はどうするの」 「ん~………リグル」 「ルーミアが言い出したんだから ルーミアが決めないと」 そう言われてますます考え込む。 30分くらい経ち、子供が大人しくなった頃。 「じゃあ、一年中いつでも美味しく食べれるように、 ずっと旬でってことで『四季』にする!」 「四季?良いと思うよ、由来以外」 これはまだ幻想郷が出来る前の、 妖怪三人による子育て日記。
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