バレンタインデー・キッス

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「はい、」 「…なに?」 「バレンタイン」 「…あぁー、ありがとう!」 まだ、俺と亮ちゃんしか来てない楽屋。 亮ちゃんが渡してきたのは、みんなが大好きなクッキー、カントリーなんちゃら。 2種類をひとつずつくれた。 でも、ラッピングとか無しで。 「今年はちゃんと作ろ思っててんけど、時間なくて…」 「ええよ。亮ちゃんがくれたってことが嬉しいもん」 ほんと言うと、今年はちょっと期待してた。 パティシエ役やったから、お菓子作れるようになったって言ってたし。 でも俺甘いの苦手やし、これでちょうどよかったかも。 「でも、さすがにそれだけじゃ寂しいと思って、もういっこあんねん」 「ほんまに?」 「ん、ちょっと目つぶってて」 亮ちゃんに言われるまま目を閉じた。 やっぱ亮ちゃんやな。 あんな市販のもんで済ませるわけがないよな。 なんやろう、と待っていたら ちゅ、と俺の唇に何かが触れた。 まぁ何かって言っても、だいたい分かってるけどね。 ゆっくり目を開けると、俯きながらもはにかんでる亮ちゃんがいた。 「亮ちゃん、」 「ん?」 「ありがと」 「…ん」 おでこにキスをしてから、亮ちゃんを抱きしめた。 俺は幸せ者やな…。 なんて思ってたら、楽屋のドアが開いた。 「おっはよーござ…ぃまぁす…。」 元気に入ってきたのは丸ちゃんで、俺らを見た瞬間、気まずそうに苦笑いして、鞄を置いて出て行った。 亮ちゃんを見たら、同じように苦笑いしてた。 「来たの丸でよかったな」 「ほんまやで。村上くんやったらめっちゃ怒られるからな、俺だけ」 名残惜しいけど、怒られるん嫌やからしょうがなく亮ちゃんを離した。 「ホワイトデー待ってるからな」 「んふ、期待しといて」 なんて言ったけど何すればええんやろ…。 一ヶ月、お菓子作りの勉強しようかな…? END
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