耳の中

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それ以上は王様からは何も聞こうとはしなかった。 それから、俺と王様の不思議な生活が始まった。 王様は意外と几帳面で綺麗好きのようだ。 几帳面で綺麗好きなら耳の穴に住むなといいたい。 王様は食事をとる事がないそうだ。 人間のように、物を食べてエネルギーにするような事をしなくても、生きていけるらしい。 王様との生活は、思いのほか順調だった。 唯一、王様にムカつく事は、イビキである。 王様も寝るらしく、寝るとイビキをかくのだ。 おかげで俺は寝不足だが、月に100万なら我慢できる。 王様との生活も、いつの間にか3ヶ月になっていた。 その頃になると、王様は不思議な事を言うようになってきた。 「あいつはダメだな」 そんな台詞をたまに言うのである。 俺は王様に、何がダメなのか、聞こうとはしなかった。 そんなある日、会社の同僚に向かって 「あいつダメだな」 と言ったのだ。
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