耳の中

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王様にそう言われた男の名前は田島。 確かにあまり使える奴ではなかったが、いい奴だ。 俺は王様の言葉の意味を深く考えずに、ただ田島を眺めていた。 それから二日後。 田島が亡くなった。 なんでも、酔っ払ってホームに落ちて、電車に跳ねられたらしい。 俺はその時に、初めて王様が田島に言った言葉の意味を理解した。 “あいつダメだな” つまり、あいつは死んでしまう、という意味だったのだ。 俺は王様に聞いた。 「王様は二日前から田島が死ぬのをわかっていたんですか?」 王様が答えた。 「わかってたよ、当たり前じゃん。 そうだ、お前もダメだぞ。 んじゃ、世話になったな」 「え?!王様?王様?王様ーーーー!?」 何度呼んでも王様からの返事はなかった。
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