強襲

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しかし、交番にも人が殺到していた。 どこも混乱し、手につけられない状況だ。 とりあえず救急車と応援を呼ばなければならない、と佐藤は無線を手に取った。 「こちら第3班、応援を求む…………」 返事がない。 佐藤は繰り返し無線で応答を求めるが、通じていないのか返答はない。 「くそっ!どうなってる!」 佐藤は無線を諦め携帯で本署へかけた。 『ツーーー』 こちらも何度かけても繋がらない… 佐藤は梨華に声をかける。 「大丈夫か?どこか痛むとこはないか?」 梨華は反応しない。 どこか一点を見つめ、瞳には覇気がない。 顔は青ざめ、身体は震えている。 「かわいそうに…ここにおいてもいけないからな…仕方ない。 少し歩くが近くにある診療所へ行くか。」 佐藤が診療所まで梨華を抱き抱えながら走っていると、街の中まで混乱が広まっていることに気がついた。 逃げ惑う人がいるわけではないが、連絡網が使用できないことで混乱が起きているようだ。 診療所が見えてきた。 佐藤は診療所へ入ると看護婦を一人捕まえる。 「ハァ・ハァ・・すまない!悪いがこの子を頼む!」 看護婦は梨華と佐藤を見て驚いている。 梨華の制服には大量の血液がついており、佐藤にも付着している。 佐藤はそれをさっしてか。 「大丈夫だ。この子には今の所は外傷はないと思うが、念のため診てやってくれ。ただ、精神的に……… とにかく自分は現場へ戻る。 あとはよろしく頼む」 梨華を近くにあった車椅子に座らせ、看護婦の肩を叩くと、佐藤は現場へ戻るために診療所の外へでようとした。
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